昨日の我が腹は激痛を訴えていた。訴え通しだった。
なんとかかんとか半日をやりすごした帰路。
全盲?の男の子(つっても大学生くらいか)が立ちすくんでいた。 往来の激しいブクロ東口付近。
「どうかしましたか?どなたかと待ち合わせですか?」 というと、 『いいえ、待ち合わせではないんですが。』とすぐ反応があった。 ひとまず対人に問題のない子だと思った。
「迷っちゃいましたか?道案内しましょうか?」 『いいえ、迷ったのではないのですが。ずっと歩いてきて、不安になってきてしまったので、ちょっと落ちつこうと思ったんです。』 「あ、そうですか、すみません。私行ったほうがいいですね?」 『いいえ、声をかけてくださって、ありがとうございます。 ぼくの後ろが池袋東口で、間違いないですか?』 「ええ、まちがいないですよ。」 『よかった、あの、だんだん不安になってきてしまって、 あの、おねがいがあるんですが。』
彼のお願いは、自分の右目の下と、左目の上を私の親指で力強く押してほしい。 というユニークなものだった。そして私はひるんだ。
「えーと、ちょっと怖いんですけど、どれくらいの力で?」 『結構強くていいんです。そうすると落ち着くんです。』 「そ、そうですか。これくらい。」 と、彼のまぶたに手を載せると、彼が私の手をとって、ぐーっと強く自分の眼孔に入れていく。
「痛くないんですか?」私は怖かった。目が飛び出そうなくらいだったから。 『大丈夫です。ありがとうございました。声をかけていただいて、 ありがとうございました。』 と、彼は繰り返した。
「道はわかりますね?大丈夫ですか?」 『大丈夫です。ありがとうございました。』 「そうですか、では気をつけて。」
私はその場を立ち去った。10歩も歩けばふくろうの交番もある。 まだ明るい。割りと開けてる子だから、大丈夫だろう。
そういえば、ずっと前の雨の日、びしょぬれで車椅子に乗った男性に声をかけた。ホームレスの方のようにも見えた。 「大丈夫ですか?何かお手伝いしましょうか?」 というと、彼は、何事かというふうに、大きな声で 『ハ??』と聞き返してきた。 「あの、雨がひどいので、どちらかに行かれるようでしたら、 お手伝いさせてください。」 『あ、イエ、いいです。』 はっきり断られた。 「えーと、でも。大丈夫ですか?」 『いいです。』 またもやはっきり。びしょぬれでもキッパリ、私の助けは要らないということだった。
必要のなかったとわかっても、声をかけて損はない。
今回の若い男の子は、「声をかけてくださってありがとうございます。」と、何回も言ってくれたのだから。
しかし、見えない相手に、自分の目を強く押してもらうなんて、 ずいぶん人を信頼できる子なんだな。と今思う。 私のほうが怖かったくらいだ。 それとも、それが彼にとっても信頼の儀式? 人を受け入れる強さを持っている、自分への信頼につながるのかしら?
などと、今、思ってみた。
私は教育実習の時は、文京区の盲学校にお世話になったので、 池袋に目の不自由な若い子が遊びに来やすいのも知っている。 もし、寄宿舎まで道案内することになったら、私の腹の状態から、 それは可能だったかな?とも思うと、結構不安だった。
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